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3月

2009.12.11

3月

僕はスーツ姿で車にいた。スーツ姿は憧れだった。親父が常にどんなときでも作業服だったから、それがたまらなく嫌いだった。親父は親父なりの考えであのスタイルだって、あとから聞いた。それでも、好きにはなれなかった。そして、そのスーツも今日から当分袖を通すことはない。僕の手には、一つの封筒に。辞表の文字は書かれた封筒。
「これでいんだ。」
僕はそうつぶやくと、封筒を手に車からでた。

 一方。車に乗り込もうとする青年。携帯電話がなった。
「はい、Rコンサルタンティング、流です。ああ、津田さん。お世話になっております。ええ、これからそちらへ。よろしくお願いします。はい、失礼します。」
 流雄太、僕の幼馴染。ある経営コンサルタント会社に働いている。同じくしてまた電話がなる。
「ヒデ…どうした?」
僕からの電話。
「今日会えるか?」
「おう。昼な。いつもの公園で。」
「じゃ、仕事頑張れよ。」
 お互い冴えない声。疲れた感じが声から伝わってきた。

昼、いつもの公園。天気は良好、それとは逆に、僕は全体に大きな雲で包まれているかのようだった。
「おう!」
 遠くから、こっちに手を振る人が見えた。すぐ、雄太とわかった。昔から相変わらずの登場の仕方。出会った次の日も同じだった。この天気も。ただ違うのは、時間と二人が曇りだということ。

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